商談は盛り上がったのに、その後が続かない。お礼メールを送り、資料も送ったが、返信が途絶えて案件が自然消滅する——営業をしていれば、誰もが経験する場面です。
結論から言うと、商談が止まる大きな原因の一つは、商談の終わりに「ネクストアクション」が決まっていないことです。 ネクストアクションとは、誰が・何を・いつまでに行うかを決めた次の一手のこと。「また連絡します」で終えず、商談の場で、顧客側と自社側の両方の行動に日付と担当を付けることが、案件を前に進める基本になります。
この記事では、ネクストアクションの定義、止まる商談の典型パターン、良いネクストアクションの4条件、商談の段階別の決め方、IT・SaaS 営業の具体例、AIで商談後すぐに決める進め方を解説します。商談の振り返り全般は成果につながる商談の振り返りで扱っていますので、本記事は「次の一手の決め方」に絞ります。
ネクストアクションとは何か?
ネクストアクションとは、商談を次の段階に進めるために、誰が・何を・いつまでに行うかを具体的に決めた次の一手です。 「次回の予定」と混同されやすいのですが、日程だけでは足りません。次回までに何を終わらせ、何を持ち寄るかまで含めて初めてネクストアクションになります。
| 曖昧な締め | ネクストアクション | |
|---|---|---|
| 例 | 「検討してご連絡します」 | 「A さんが 10 月 15 日までに情シス部長へ資料を共有し、17 日の 30 分で懸念点を一緒に確認する」 |
| 誰が | 不明 | 顧客側・自社側ともに明確 |
| いつまで | 不明 | 日付がある |
| 次の段階 | つながらない | 次の商談の目的が決まっている |
ここで大事なのは、ネクストアクションは自社の作業リストではないことです。資料を送るのは自社の作業ですが、案件を進めるのは顧客の行動です。顧客が社内で誰に何を共有し、誰を次の場に呼ぶのか。そこまで決めて初めて、商談は前に進みます。
なぜ「また連絡します」の商談は止まるのか?
止まる理由は、誰も次に動く責任を持たないまま、顧客の日常業務に商談が埋もれていくからです。 顧客にとって、あなたの商談は数ある業務の一つにすぎません。次の一手が決まっていなければ、優先度は他の業務に押し出されます。
止まる商談には、次のような典型パターンがあります。
- 自社だけが動く:資料送付やお礼メールなど、自社の作業で終わり、顧客側の行動が一つもない
- 期限がない:「近いうちに」「検討でき次第」で、確認する日が存在しない
- 関係者が増えない:担当者だけで話が進み、決裁者や情報システム部門など、判断に関わる人が次の場に出てこない
- 次の商談の目的がない:日程は決まったが、その場で何を決めるのかが曖昧で、情報交換だけで終わる
特に3つ目は見落とされがちです。購買に関わる人を整理する考え方はストラテジックセリング、決裁者を押さえる観点はMEDDICで解説しています。ネクストアクションに「関係者を増やす行動」を入れることが、止まりにくい案件をつくる近道です。
良いネクストアクションの4条件は?
良いネクストアクションは「具体的」「期限付き」「担当が明確」「商談を前に進める」の4条件を満たします。 商談の終わりに、この4つを自分に問いかけると、曖昧な締めを減らせます。
良いネクストアクションの4条件。1〜3が揃っても、4が欠けると「やったが進まない」行動になる。
具体的であるとは?
具体的とは、「何を」が第三者にも伝わる文になっていることです。 「検討を進める」は具体的ではありません。「導入後の運用手順を、A さんの部署の 3 名に共有する」なら、行動として確認できます。
期限付きであるとは?
期限付きとは、確認できる日付が決まっていることです。 日付がないと、動いたかどうかを確かめる機会がありません。顧客に強いるのではなく、「来週の金曜にもう一度お時間をいただき、結果を伺ってもよいですか」のように、次に会う日を先に押さえる形が自然です。
担当が明確であるとは?
担当が明確とは、顧客側・自社側の両方で「誰が」が決まっていることです。 顧客側の担当が決まらない場合は、決まらないこと自体が重要な情報になります。社内で推進する意思のある人がいるのか、あるいは担当者が個人的な関心で聞いているだけなのかを見極める手がかりです。
商談を前に進めるとは?
前に進めるとは、そのアクションが終わると、案件が次の段階に近づくことです。 資料を送る、事例を共有するなど、やること自体は小さくても構いません。ただし、その行動が「決裁者に会う」「懸念点が解消する」「導入条件が明確になる」のどれかにつながっているかを確認します。つながらない行動は、忙しく見えても案件を動かしません。
ネクストアクションは、商談の段階でどう変わる?
ネクストアクションは、案件が今どの段階にあるかで変わります。 段階を見誤ると、早すぎる提案や、的外れな資料送付が起きます。次は、段階別の考え方の一例です(段階の名称や数は組織によって異なります)。
| 段階 | 顧客の状態 | 目指す状態 | ネクストアクションの例 |
|---|---|---|---|
| 初回 | 課題が漠然としている | 課題を言語化できている | 顧客の現状の数字(工数・件数など)を、次回までに一緒に整理する |
| 課題の深掘り | 課題は認識したが、重要度が低い | 解決の優先度が上がっている | 課題が放置された場合の影響を、顧客が自分で試算する |
| 提案 | 解決策に関心がある | 関係者が評価に参加している | 情報システム部門や現場責任者を次の商談に呼ぶ |
| 合意形成 | 導入に前向きだが、社内承認が必要 | 稟議に必要な材料が揃っている | 稟議書に載せる効果の根拠を、顧客と一緒に作る |
商談の初期に見極めるべき観点はBANTやCHAMP、課題を引き出す質問の型はSPIN話法で整理しています。質問で見えた情報が、次の段階のネクストアクションの材料になるという関係です。型の全体像は営業フレームワーク大全にまとめています。
SaaS営業では、ネクストアクションをどう決める?
SaaS営業では、検討が長く関係者が多いため、「誰を次の場に呼ぶか」と「社内説明の材料を誰が作るか」をネクストアクションに入れるのが効果的です。 次は、説明用の仮の例です(数値は例示であり、実際の顧客や実績ではありません)。
例:情シスの懸念が出た商談
自社の営業支援ツールを提案する SaaS 企業の営業担当 B さんが、顧客企業の営業部長と初回の提案商談を行ったとします。営業部長は前向きですが、商談の終盤に「情報システム部門が、既存の SFA との連携とセキュリティを気にするはず」と漏らしました。
| 曖昧な締め | 良いネクストアクション | |
|---|---|---|
| 商談の終わり | 「資料をお送りしますので、社内でご検討ください」 | 「情シス部門の方の疑問点を事前に伺い、来週水曜までに連携とセキュリティの回答資料を私が用意します。翌週月曜に、情シスの方も交えた 30 分を設定させてください」 |
| 顧客側の行動 | なし | 営業部長が、情シス部門の担当者を月曜の枠に招待する |
| 自社側の行動 | 資料送付 | 想定される懸念への回答資料を水曜までに用意 |
| 次の商談の目的 | 不明 | 情シスの懸念が解消するかを確認する |
曖昧な締めでは、営業部長が資料を社内に回すかどうかが分からず、懸念は誰にも伝わらないまま残ります。後者は、顧客側の行動(情シスを招く)と、次の商談の目的(懸念の解消)まで決まっているため、案件が止まる要因を先に潰せます。
例:「価格で比較している」と言われた商談
別の商談で、顧客が「席あたり単価では他社のほうが安い」と話したとします。ここで「見積を見直します」だけをネクストアクションにすると、値引きの議論に入ってしまいます。価格の比較を、運用負荷や定着までを含めた総コストの比較に移すことを次の一手にします。
- 顧客側:現在の運用で、月に何時間かかっているかを数字で共有する(期限:次回まで)
- 自社側:その数字をもとに、導入前後の総コストの比較表を用意する(期限:次回の 2 日前)
- 次の商談の目的:単価ではなく、総コストで比較する土俵に移る
失注の背景にある「価格で負けた」を読み解く考え方は失注分析の実践ガイドでも扱っています。価格の話が出たときこそ、ネクストアクションで比較の軸を変えることが重要です。
ネクストアクションが決まらないのはなぜ?
決まらない原因は、多くの場合、商談中に「次に何を決めたいか」を営業側が持っていないことにあります。 商談の目的が曖昧なまま進めると、終盤に急いで日程だけを押さえることになります。
対策の考え方は次の3つです。
- 商談の開始時に、その商談のゴールを決める:「この商談の終わりに、〇〇が決まっていればよい」を、準備段階で言語化する
- 残り 5 分でネクストアクションを確認する:議論が終わってから決めるのではなく、時間を確保して、顧客と一緒に整理する
- 顧客が決められない理由を聞く:決められない場合は、迷いの理由(社内調整、予算、優先度など)を質問し、それ自体を次の論点にする
属人化の観点では、ネクストアクションの質は営業担当者の経験に左右されやすい部分です。ベテランは無意識に「関係者を増やす」「期限を押さえる」ことをしていますが、それが言語化されていないと、組織の再現性は上がりません。型として共有する考え方は営業の型(セールスプレイブック)で解説しています。
AIはネクストアクションの決定をどう助けるのか?
AIは、商談の内容から決まっていないことと、次に取るべき行動の候補を、商談後すぐに示すことで助けになります。 人が毎回、記憶と手書きのメモから整理するよりも、抜け漏れが減り、その日のうちに動けます。
ただし、どのネクストアクションを顧客に提案するかの判断は人が持ちます。 AIが出すのは、判断の材料と下書きです。記録するだけのツールとの違いは営業支援AIの選び方、商談の分析でどこまで分かるかは商談分析AIとはで整理しています。
IntelligentSales(インテリジェントセールス)では、商談後の支援として次のことを行います。
- 議事録とネクストアクションを自動で生成する
- 5 つの分析を束ねた評価・アクション(統合フィードバック)で、「次に何をすべきか」を一つにまとめて提示する
- 提案書のドラフトを用意し、失注の芽や競合の兆しを検知する
商談を録音して要約するだけでなく、理想の営業の型を基準に、いまの商談がどこで止まっているかを見て、次の一手を逆算する(バックキャスト)のが特徴です。営業担当者は、提示された候補を確認し、顧客の状況に合わせて調整して使います。商談後の振り返りと次の行動づくりのつながりについては、営業AIエージェントとはで、商談の前後の流れとあわせて解説しています。
ネクストアクションを組織で定着させるには?
定着させるには、個人の工夫に任せず、商談後に確認する場と共通の書き方を決めます。 次の3つを小さく始めるのが現実的です。
- 書式を揃える:「誰が・何を・いつまでに」の3点と、顧客側・自社側の別を、SFA の同じ欄に残す
- 週次の案件確認で、ネクストアクションの期限を見る:期限が過ぎている案件、顧客側の行動が空欄の案件を優先して確認する
- 決まらなかった理由も記録する:ネクストアクションが決まらなかった商談の理由が溜まると、組織としての課題が見える
SFA への入力を負担なく残せるかは、この仕組みが続くかどうかを左右します。商談の記録から入力を支援するAIを使う方法もあります。
まとめ
- ネクストアクションとは、誰が・何を・いつまでに行うかを決めた、商談を進める次の一手
- 「また連絡します」で終わる商談は、誰も次に動く責任を持たないために止まる
- 良いネクストアクションは、具体的・期限付き・担当が明確・前に進めるの4条件を満たす
- 顧客側の行動(関係者を呼ぶ、数字を出すなど)まで商談の場で合意する
- SaaS営業では、情シスなど関係者を増やす行動と、価格比較を総コスト比較に移す行動が効く
- AIは候補と下書きを商談後すぐに示す。提案の判断は人が持つ
IntelligentSales の機能は機能ページ、料金は料金・プランをご覧ください。導入のご相談は資料請求・無料デモ相談からどうぞ。